prêt-à-porter

私が関わった人間は全て私の作品である

「ある友人の恋愛」

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「あなたは、私の愛にちっとも気づかない。だからといって、この愛を注ぐことを止めようと思わない」とは、この女は思わない。

この女が持っているものは、彼女自身で気づくようなものではないからだ。そこまでのことを私も要求していない。ただ、私が「愛されている」と思えるだけで十分なのだ。

 

 

 

散々な目に遭ってきた。私はハナから人間を「信じている」。しかし、それが破られる瞬間を何度も目の当たりにしてきた。そして今、簡単には人を信じられずにいる。過去の経験が色濃く残っているからか、私はこの女を全く信じていない。それでも、私の中には、正義感が唯一支えているものがある。それは、素を見せるということだ。それだけはずっと徹底してきた。いずれにしろ、素を知ってもらわねば、私の思う恋愛にはなり得ないからだ。

 


この女の愛に気づいたのは、つい最近。

それまで「いつ化けの皮が剥がれるか」と馬鹿にしていたこの女は、とんでもない「怪物」だった。もちろん、私からすると、そして今までの女と比較すると、であるが。

その瞬間、この女の「永遠性」を見て取れた。それに私の心が震えたのは、そこにいつぞやの自分を見たからだ。私がずっと失くしていたもの。本当は必要で、欲しくて仕方がなかったけど、殻に閉じこもり無理矢理に自分を納得させていたところ。それは、その正体は、以前の「私」だった。

 

私は私と出会った。ドッペルゲンガーである。もうそれは死んでいるようなものだ。永遠性とは死とも言い換えることができる。要するに、この女と出会った瞬間に、私は死んでいたのだ。皮肉なものである。私は生きた心地がした瞬間に死んだのである。この女に殺されたのだ。そして、それは私が久しぶりに、あるいは初めて「生」を感じた瞬間だった。

 

私は基本的に、他者を殺したい・支配したいと思うタチだ。しかし、それは裏を返せば殺されたい・支配されたいということになる。

 

〈こころ〉は、簡単にひっくり返る。

 

 

 

2016年