超短編集 四選
赦されたい私と罰したい私とが押問答をする間に三人目の私が鏡を前にした。鏡の中の人間が自身とかけ離れすぎていることに憤りその鏡を割りその返りの破片で顔を朱に染めた。赦されたい私は新たな生命を受けた様に感動し、罰したい私も肉体的に傷つけられることでそれを叶えた。共に痛みを伴うものであった。
田舎の一両編成の列車に乗った。車窓から見える見事なまでの田園風景。そこに真っ青なワンピースの女の子が飛び込んできた。走り回る青、太陽の光を浴びてキラキラとしている。ふと車内に視線を戻すと真っ青なワンピースの女の子が私の目の前に立ち「お兄さん、何でそんなに私のことを見ているの?」
シャワーを浴びたらすぐに煙草を吸いたくなるの。半乾きの髪にこの匂いをつけてやりたくなるのよ。私なんかからいい匂いがしたら困るのよ。変なのに近寄られたくないし。でもね、あなたに会う時には必ずその行程を経たことを後悔するの、だから香水の匂いがきついのよ。これで答えになっているかしら。
頭痛が酷くなり男は吐き気を催した。そういうことのできる場を探しながら男は炎天下に街を這いずり回った。そのうち耐えられなくなり跪(ひざまず)いた。頭を上げると真っ白なワンピースの女が立っていた。「求婚でしょうか?」更に強く吐き気がした。男は力を振り絞って言った「結婚して下さい」
@pourguoi 秋人間