prêt-à-porter

私が関わった人間は全て私の作品である

超短編集2

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  1. 私は泣いている。そう気付いたのは人集りが私の周りにできてからだった。私は何故か泣いていた。一体誰が泣かしたの?ねぇ誰よ、出てきなさいよ。聴衆のいることで私は急に恥ずかしくなって誰もいない公園までそそくさと歩いた。私はまた泣いている。朝焼けと共に小鳥が私に視線を寄せる。小鳥が鳴いている。


  2. ノワール。それが明度の低いものであることを私は先程知った。遠くにコントラバスの音色が在る。真昼間の公園では鳴き止む気配のない蝉も羽を畳む気のないてんとう虫もみな生に満ち溢れていた。気付くと私は真っ黒な洋服を着ていた。また遠くからノワールと弦楽器の音がした。先よりも近くで聞こえる。


  3. 代名詞、固有名詞、名詞。動詞。副詞。助詞。形容詞、形容動詞。冠詞。私はね、不定詞が好きなの。日本語には不定詞がないでしょう。私日本(にっぽん)ってあんまり好きじゃないの。こんな国に生まれてきてとっても嫌なの、不自由な思いをしているの。だって、ほら、ここにはニューヨークにないものがないでしょう。


  4. なぞなぞを出すわね。私がいるとあなたがいなくて、あなたがいると私がいないもの。それってなんだと思う?もしね、あなたがこの答えを出せたら私は今日あなたのお家へ伺うわ。あなたもそれを望んでいるのでしょう。でもね、私がなぞなぞを出したのだけど私もこのなぞなぞの答えをまだ知らないのよ。


  5. あなたはトルマリン漬けになっている私の顔面を見ながら私に訴えるのよ、何があったんだ、と。でもね、仮にあなたがあの場にいたとしても私はこの姿になるだろうことを簡単に想像できた。残念ね、私もあなたにこんな姿見られたくなかったわ。でもね、本当はあなたがあの場にいなかったことが悪いのよ。

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