prêt-à-porter

私が関わった人間は全て私の作品である

超短編集1

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  1. 私が野崎にあなたは病気であると伝えると野崎は特に驚きもしなかった。野崎は自分が病気であることを知っていたのだ。私はなんて恥知らずなことをしたのかと後悔した。野崎は一見すると可愛い子ちゃんで男の子にもモテるだろうしご立派な両親がいて、郊外だけど一戸建ての家の二階にある綺麗な八畳の部屋を与えられている。野崎は普段の生活をほとんど笑顔で過ごし他人に悪い印象を与えることなど滅多にない。


  2. 同棲して三日目。季節は秋。今日は一日晴れた。ドアを開けると女は既に帰宅していた。平日の午後八時。家に帰り自分以外の人間がいることに私はびっくりしない。何故ならここに移り住むまでずっと家族と暮らしていたからだ。むしろ家に帰り誰一人として人間がいないことの方が私にとっては不自然だ。


  3. そこまで高価なものではなかった。しかしお互いの薬指にぴったりのものだ。随分と細いMの薬指、指輪。店員曰くこのサイズは特注になる、らしく矢張り二つ揃った状態で一緒に貰いたかったので後日特注のものが出来上がった時に二つを一緒に貰うことにした。貰い受けるのは私の役目であった。


  4. Mはコンビニエンスストアに入る度に鳴る音が大好きで常識の範囲内で何度もその音を聞きに行っていた。私が初めて彼女を目撃したのは家の近くのコンビニエンスストアだった。私はスウェットにパーカというラフな格好だったがMが気にかかり声を掛けた。Mは子供の様にこの音が好きであることを僕に伝えてきた。


  5. 「全ては架空のお話です。」そのアナウンスを聞いた私たちは互いに目を合わせ、数秒後笑い合った。私たちの出会いも偽物なのではないかと心配をした。それを目の奥に見て取れた。僕は不安だった。君が不安だったかは定かではない。けどすぐに家に帰って重なり合った、確かめ合う様にゆっくりと。


  6. 今日は矢鱈と書ける。そう思った僕は矢張り書き続けた。部屋には私の他に誰一人いない。ダブルベッドの奥に誰かがいてもいいと思った。でも僕が書き続ける為に必要なものは万年筆と原稿用紙だけであった。このまま誰も僕が書き続けることを止めてくれなかったら僕は死んでしまう。フレンチに誘って欲しい。

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