「連絡口」
あなたに直接的な連絡口を通してしまって、いつもあなたが隣にいるような錯覚をおぼえるだなんて考えただけで気後れしてしまう。あなたは雨の中で女とまぐわうに相応しい男だけれど、ことの終わりの雨の温度はいつも極めて冷たい。あなたには月や星などという浪漫語を付して形容する場面が少ない代わりに、魂に宿る肉や男や煙草の煙りや女をころすまで愛す雄々しさが備わっている。そんな男が憂鬱を発揮したらどうだろう。そんな折りにわたしはあなたに出逢った。出逢ってしまったんだ。遭難のように。そんな劇的な遣らずの雨を浴びて、お互いの思考のまさぐり合いと疑念と一部の受容を、わたしたちは味わった。しかし折角の親睦も、曖昧さを通り越し、早くに終着してしまった途端、その電車からは降りざるを得なくなってしまう。架空の粘膜の上で愛し合ったキャンディは見るも無惨に部屋の隅に転がっていく。そんなもの。