prêt-à-porter

私が関わった人間は全て私の作品である

『馬鹿は殺す』

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馬鹿みたいに僕はまた煙草を手に取る。


煙草の箱に手を伸ばし煙草を一本取り出し口許へ近付けそれを咥え火をつけた瞬間こそが煙草を吸うという行為のピークだ。口許へ届いた煙草に火をつけた後は既にその実が失くなり始め、葉は元いた野に散り、紙は木に舞い戻る。

まるで僕らの一生を見るかの様だ。

 

女は言った。「馬鹿みたい。私の化粧が毎日違う事を皆不思議がるの。厳密には皆も毎日同じ化粧な訳ないのに」フランス女がこんな事を言っても皆はフランス人は気が変わり易いという評価しかしない。女の言う様に人間なんてものは一瞬一瞬で気が変わるものだ。フランス女は頭がよく気高い、そして自分に対して尋常でない程の素直さ、正義感、美学を持っている。その為、その様に周りから見えてしまう。女は何かを思い出した様に続けた。「貴方の薔薇と私の薔薇が同じな訳ないでしょ。だから貴方の薔薇が欲しいわ」確かに女の話は突然変わる。フランス女だ。しかしよくよく考えてみると一貫はしている。僕は応えた。「君ほど美しい女なら何本も薔薇をもらう機会があっただろう」「違うの。何べんも言わせないでね。貴方の薔薇が欲しいのよ。わかるかしら」「僕の薔薇か、勿論わかる。でももしかしたら君の薔薇が僕にとっては殺人かもしれない。其れでも欲しい?」何の迷いもなく女は応えた。「ええ、欲しいわ」「でも僕はすぐには君に僕の薔薇を用意は出来ない。僕には僕の薔薇があって、君にもし其れをプレゼントするとしても僕のタイミングというものがあるからね。だから君は其れまで待てるかい?」「わかったわ、其れなら待ちましょう。でもその間に私がいなくなっても責任は持たないわよ。それでこそ対等な条件でしょ」僕は微笑みながら応えた。「なるべく急ぐよう努力するよ」そんな会話をした後、女は決まって沈黙を用意する。上機嫌なのだろう。その至極の会話を再度思い出して堪能してるかの様だった。僕はゴッドファーザーのアル•パチーノ扮するマイケル・コルレオーネの様にまた煙草に火をつけた。僕は自分が理解する限り、公平をとても愛している人間だ。例えば万引きをする際には真っ赤でド派手な服を着て犯行をするだろう。僕は自分の中でそのような公平性を持っている。頭の悪い女は皆、助手席のドアを開き、エスコートしてやるとすぐに女王様にでもなった顔をする。僕はそんな女を女として見れなくなる。それが僕の公平性だった。 



~2011.03.31〜


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