prêt-à-porter

私が関わった人間は全て私の作品である

『comfortable』


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女はもしかすると僕を裏切った。正式な計画のもと破談したので正式には裏切りではないのかもしれない。裏切られた時僕は首を傾げなかった。心が傾いた。斜に構えられた心はまたすぐにニュートラルな状態へと戻った。その間ギアは一度も入れ替えられていなかった。そこは遠くに地平線が見えるだけの所だった。地球は恐らく真四角に出来ていると感じさせるくらいだった。僕は寝た。そして起きた。狭くて流動的な空間の中で僕は何度も枠組みを壊しながら自分のcomfortableなポジションを探していた。ある男は言った。「ポジショニングだ」と。僕には響いて来なかった。流動的な空間に果たしてそういうポジションがあるのだろうか。恐らくはあるだろう。僕はそれを見定めなくてはならなかった。または感じ定めなくてはならなかった。見るというよりかは観るに近いことを要求されていた。目の前の女が僕にカメラのレンズを向ける。僕は微笑んだ。女もまた微笑んだ。口元だけが見える。女は「固形物はあなたに任せるけど、流動物は私に任せて。」と言った。僕は黙ってそれに従った。空は青かった。太陽が力一杯に僕らを照らしていた。僕は火を探しに出掛けた。火は何処にもなかった。火は自分で起こさなくてはならないものだったと気付いたのはほんの先程だった。ドアが閉まった。冬を越えた木々が少しずつその実を剥き出しにする季節に差し掛かっていた。僕の靴はかかとから擦り減り、つま先から腐りかけていた。それよりも何秒か早く脳味噌が溶け始めた。脳天からつま先までが人間だとしたら僕らの人生はその距離くらいの意味しか恐らくないだろう。女が飽きれながら僕を見ている事に気付くと僕はまるでそれを知らないかの様に歩いた。女がいつも僕を見ていた。僕は止んだ。そして脳天からつま先まで神経を尖らせながら煙草に火をつけた。外は寒かった。

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