prêt-à-porter

私が関わった人間は全て私の作品である

掌編小説『目が合う』

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女と目が合った。私はその女を初めて見た。ひょっとすると前からこの喫煙所にいたのかもしれない。でも私はその時までその女を認識していなかった。認識した瞬間、その女と目が合った瞬間を今でも覚えている。女は仏頂面をしていた、私と同じくらい。私たちは一度目が合った。丁度、互いに煙を口から吹き出している最中だった。一瞬だったが目が合い、その後すぐに視線を外した。(なんだよ、変なやつと煙を吐き出すタイミング同じだった、最悪)そう回想して、すぐまた気になってその女を見た。女も私を見るところだった。私はその女と会話をしたことがない。でもその瞬間、一度目の目合いと回想ともう一度見るタイミング、全てが同じ工程で互いが見つめ合っていることを感じ取れた。

私にはもうその女と会話をする必要がなかった。会話せずにコミュニケーションが取れた場合、それ以上に一体どんなコミュニカシオンを求められるのだろうか。私は半分も吸っていない煙草を草むらへ捨てそこを去った。吐き気がした為だ。まるでドッペルゲンガーだ。たまったもんじゃない、こんなところで死んでたまるか。歩き出し数秒すると先いた場所から「大丈夫ですか?」という何人かの声が聞こえた。私は歩きながらそちらを一瞥した。どうやら先程の女が草むらに吐いている様だった。

草むらは煙を立てていた。


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@ 秋人間