prêt-à-porter

私が関わった人間は全て私の作品である

短編集

超短編集 四選

赦されたい私と罰したい私とが押問答をする間に三人目の私が鏡を前にした。鏡の中の人間が自身とかけ離れすぎていることに憤りその鏡を割りその返りの破片で顔を朱に染めた。赦されたい私は新たな生命を受けた様に感動し、罰したい私も肉体的に傷つけられる…

超短編『黄色よ』

私はあなたに話しかけた。「この黄色いネクタイと青いネクタイだとどちらが今着ているスーツに合うかな?」あなたはうつむきながらペンを走らせていた、何の返事もなく。私はもう一度あなたに話しかけた。「今少し話してもいいかな?」あなたはようやく返事…

超短編集5

本当は病気なの。とっても苦しいの呼吸がままならないの。だからいつも透明な酸素ボンベを背負って生きているの。でもそれを隠してた。でもあなたはどうしてそれに気付いたの?男は答えた。「君が僕と同じものを背負っていたからだよ、昨日君の横を通り過ぎ…

超短編集4

私は輝くターコイズブルーの石を大切にネックレスにして身につけていた。不思議なことに多くは何故こんなドス黒い茶色い石を身につけるのかと不思議がっていた。ある時電車で小さな女の子がこれを指差し言った。「ママー、ターコイズブルー色だよー」私はそ…

超短編集3

イヤーフォンとヘッドフォン。あなたはどちらがお好み?私は勿論ヘッドフォンよ。だって音が大きいでしょう、こちらの方が出口が大きいのだから音が大きくて当然じゃない。私小さいのって嫌いなの、だってつまらないでしょう。でもあなたのそれは好きよ、そ…

超短編集2

私は泣いている。そう気付いたのは人集りが私の周りにできてからだった。私は何故か泣いていた。一体誰が泣かしたの?ねぇ誰よ、出てきなさいよ。聴衆のいることで私は急に恥ずかしくなって誰もいない公園までそそくさと歩いた。私はまた泣いている。朝焼け…

超短編集1

私が野崎にあなたは病気であると伝えると野崎は特に驚きもしなかった。野崎は自分が病気であることを知っていたのだ。私はなんて恥知らずなことをしたのかと後悔した。野崎は一見すると可愛い子ちゃんで男の子にもモテるだろうしご立派な両親がいて、郊外だ…