prêt-à-porter

私が関わった人間は全て私の作品である

掌編小説

「掌編小説B」

Bは愛想を振り撒いた。-振り撒けるだけ振り撒いた-積もりに積もって地球は一回転した。私はBになりBは私になった。互いに鏡の中の人間が一体誰なのかさっぱりわからなくなった。「これが私?」(Doppelgänger)Bはもう一回転させれば元に戻ると思い、ず…

『三人目の私』

『横』2014.8.26.赦されたいと願う私と罰したいと迫る私とが押問答をする間に三人目の私が鏡を前にした。鏡の中の人間と私とがあまりにも違いすぎたことに憤り鏡を割りその破片で顔を朱に染めた。赦されたいと願う私は新たな生命を受けた様に感動し、また罰…

掌編小説『手紙〜Sorbonne〜』

僕の記憶が正しければ、君に手紙を書くのはこれで二回目になる筈である。一回目の手紙は、君が側にいて住所を言ってくれたので僕は「茶の本」の一節だけをその手紙に書き、郵便局から投函した。その後に恐らく僕は君を支配したくて--そもそもそんなもので支…

「病気の女」vol.2

私には特殊だと言われる様な能力があって、これを誰に説明してもわかってはもらえないだろうけど、その人間と五分でも会話をしたらその人間が大体どういう人間だかわかる。正確に言うとその人間が私にとってどのくらい利害があるのかわかるということだ。私…

「病気の女」一筆書

私は病気の女を沢山見てきた。私がその病気とやらに魅力を感じてしまうからかもしれない、または私がそれを引きつけてしまうからかもしれない、あるいは私が病気だからなのかもしれない。現代では病気の定義を定めることが大変難しい。例えば、医者の定めた…

『ピンクの女』

起きると女が横で寝ていた。午前3時だった。村上龍のエッセイを読み、紫陽花の葉を千切りフライパンで炙り、ヤクみたいにして吸うと本物の様な味がするとのことで、それを試した日のことだった。机の上にはグラスが2つあり、氷が溶け赤いリキュールだった…

掌編小説『天使と悪魔』

「人間の中には夜叉がいて、あるいはそれを悪魔と呼ぶべきなのかもしれない。天使と悪魔とでバランスを保ちながら人間は生きている。この瞬間たまたま天使だったり悪魔だったりするだけだ。だから人間とはとても曖昧で、矛盾もする」 「ぢゃ、あなたは今どちら…

『サウスポー』

2011年09月15日05:41あなたがサウスポーなのが好きなの。それ以外にあなたのいいところはない。だってそのサウスポーだけがあなたの本能なのよ。他はあなたのお母さんが無理矢理、躾けたものよ。私にはわかる。だからあなたのそのサウスポー以外は嫌いなの。…

『鯉に恋』

僕は女を見た。初めてこの生き物たちを女なのだと認識した瞬間だった。それは僕にとって衝撃的だったし、男として宿命的であったかの様に思われる。僕は一目惚れをした。今になってはわかる事だが、其れは一目惚れだった。僕は今でも初めて女を見た時の事を…

『馬鹿は殺す』

馬鹿みたいに僕はまた煙草を手に取る。煙草の箱に手を伸ばし煙草を一本取り出し口許へ近付けそれを咥え火をつけた瞬間こそが煙草を吸うという行為のピークだ。口許へ届いた煙草に火をつけた後は既にその実が失くなり始め、葉は元いた野に散り、紙は木に舞い…

『comfortable』

女はもしかすると僕を裏切った。正式な計画のもと破談したので正式には裏切りではないのかもしれない。裏切られた時僕は首を傾げなかった。心が傾いた。斜に構えられた心はまたすぐにニュートラルな状態へと戻った。その間ギアは一度も入れ替えられていなか…

『精神分析入門(上巻)』

女と一緒に恵比寿の本屋に入り僕はフロイトの精神分析入門(上巻)を買った。女は次の日、電話をしてきた。「今入った本屋ね、精神分析入門の上巻だけないの。」と言い、切った。--~--~~--~-~~--~--~--~~--~-~~--~--~--~~--~-何でもご依頼受けます。http://pog…

『僕はエリーゼの為に』

2011年08月13日00:10「エリーゼのために」が流れた。机の上にある携帯が震えていた。量子力学的に言えば、それは私には詳しくはわからないが、厳密には人間だってものだって何だって小刻みに震えているらしい。20世紀の象徴であるコンクリートの壁を人間の拳…

『毒々しく太腿の血が逆流し』

毒々しく太腿の血が逆流し拍手をしながら心臓へと辿り着く。そしてまた順流し瘡蓋より飛び出る。わたしとあなたは全て時計や夢や虫の中。革製の紐の結びが緩くなり始める頃私たちは地獄へと上ることになるだろう。それからというものまるで静岡のように平穏…